このページではアート作品をカテゴライズせず、1つの作品をピックアップします。傑作だけを厳選し、その作品が意味するところ、時代背景、完成されるまでのエピソードなど出来る限り深く掘り下げて紹介させていただきます。
雨、蒸気、速度-グレート・ウェスタン鉄道
ウィリアム・ターナー,1844年,90.8×121.9c,油彩
英国を代表するロマン主義の風景画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー晩年の傑作『雨、蒸気、速度-グレート・ウェスタン鉄道』。本作に描かれるのは近代化を象徴する(グレート・ウェスタン鉄道)の蒸気機関車が、雨の中で蒸気を上げ、テムズ川に架かるメイドンヘッド橋の上を渡る情景を描いた作品である。本作には画家の近代性への強い興味が示されているが、近代化に対して否定的であったか肯定的であったかは現在も議論が続いている(一般的には否定的であったとする説が強い)。迫り来る機関車の前には野うさぎが必死に横切る姿が描かれており、この野うさぎの描写によってターナーは速度を表現した。また画面左部分のテムズ川には一艘の小船が描かれており、野うさぎと共にこれらにも画家の近代化への何らかの意図が込められていることは明白である。なおこの近代性についてはターナーから強く影響を受けた印象派の巨匠クロード・モネが手がけた同画題(蒸気機関車)の作品『サン・ラザール駅』などとしばしば比較されている(モネ自身はターナーを「幻想性豊かなロマン主義の画家」と位置付けており、自身の立場と明確な区別をしている)。本作の色彩描写や筆触についても、画家の晩年期の特徴である白色の地塗りを活かし色調を高めた(アカデミックな手法とは一線を画す)独特の色彩や、己の手をも利用した即興的で速筆的な筆さばきが存分に堪能することができる。[テキスト引用:Salvastyle.com]
道路と土手と塀
岸田劉生,1915年,56.0×53.0,油彩
1915年ll月5日に10日問くらいかけて描きあげたもので、劉生はこれを「クラシツクの感化」すなわち西洋の古典的絵画の影響から脱しはじめ、再び「ぢかに自然の質量そのものにぶつかつてみたい要求が目覚め」て生まれた風景画の一つに挙げている。そして再びじかに自然にぶつかるといっても、もうこの時は前の時代と同じになることはできないといって、次のように述べている。「何故ならこの時はもうクラシツクの強い感化を一度通り、猶またそれに浴しつゝあるからだ。捕はれから段々と離れたが、得るべきものは得てゐた。切通しの写生はこの事を明かに語ると思ふ。その土や草は、どこ迄もしつかりと、ぢかに土そのものの美にふれてゐる。しかしどことなく、古典の感じを内容にも形式にも持つ。自分はこの画は、今日でも可なり好きである。一方その表現法がクラシツクの形式にまだ縛られてゐる処があるのを認めるけれど、あの道のはしの方の土の硬く強い感じと、そこからわり出して生へてゐる秋のくすんだ草の淋しい力とは或る処迄よく表現されてあると思ふ」。劉生がその独自の写実様式を確立した作品で、彼の風景画の代表作でもある。[テキスト引用:文化遺産オンライン]
腕を組んですわるサルタンバンク
パブロ・ピカソ,1923年, 130.8×98.0cm, 油彩・カンヴァス
ピカソの「新古典主義の時代」を代表する作品のひとつです。サルタンバンクは最下層の芸人のこと。定住して演技場に出ることはなく、縁日などを渡り歩き、即興の芸を見せます。曲芸などを専門とする職業的芸人の失敗者という意味もあります。サルタンバンクを描いたこの作品は、社会の周辺にいる人たちへのピカソの共感から生み出されたというよりも、むしろ芸術家自身の肖像かもしれません。ギリシア彫刻のような顔立ちは、そのことを暗示しています。画面の左側に人の顔のような線が見えます。さらに、科学的な調査によると、サルタンバンクに寄り添うように女性の姿が描かれていたようです。この作品の旧蔵者のひとりはピアニストのホロヴィッツです。
- ブリヂストン美術館


